市場価値を爆上げするのは、スキルではない

私は若い頃コンサルティングファームに在籍していて、自分の市場価値についてかなり悩んでいました。

人の市場価値を給料だけで測るものではないと思うのですが、適切な指標もないので、一旦給料で測るとします。

そうすると、当時いた外資系コンサルティングファームの給与は、商社や銀行といった、他のいわゆる高給取りと言われる職業より、多い状況でした。

じゃ、なぜなのか、ということを考えた時、その当時の先輩方は「時給にすると割に合わないくらい働いているから」と言っていました。

でも、それでは、コンサルティングの仕事は労働集約型で、決して価値に対した対価をもらっているわけではない、ということを言っているようで、私個人としては納得がいかなかったのをよく覚えています。(ちなみに、その反動なのか、当社で残業してる人が、プロジェクトの山場や、緊急対応が必要な時以外ほとんどいない会社にしてしまいました)

市場価値の高い人は、他の企業でも通用するはず

ところで、当社では「他の企業に行っても通用する人になって欲しい」と思いながら教育を行っています。

当社のような小さな会社はいつ潰れるかわかりません(縁起でもないですが)。

社長の仕事の一つに、「どんなことになっても、社員の生活を守る」があるとしたら、私は自分の財産のすべてを放出しても、長期的に会社にいる全員の給料なんて払える資産は残念ながら持ち合わせておりません。なので、この点についていうと、どこの会社に転職したいとなっても、「ぜひ来て欲しいです」と言われるような人材になって欲しいなと思っています。

別に、会社が危ないわけでも何でもないのに、こんな話をする必要がないのですが、「雇用の継続性」ということを考えると、極論すれば、当社だけで一生働く必要などなく、どこでもやっていける人であれば、食いっぱぐれることなんてないという話をするための例です。

話を戻すと、ここで重要なのは、「どこの会社でも」というところです。

例えば「デジタル系の会社であったら」とか、「マーケティングの会社だったら」とかでは、あまり意味がないと思っているのです。

「どこの会社でも通用する人材。」これぞ、市場価値の高い人材ではないでしょうか。

では、どんな人材であれば、そう思われるのでしょうか。

市場価値の高い人材において、スキルの前に大切なこと

多くの人は、「スキルを磨けば市場価値が爆上がりする」と考えているようですが、実際に会社経営をしていると、そうでもありません。

スキルが高くても、クライアントに迷惑をかける人は沢山います。迷惑をかけるくらいなら、いっそお客様に会わないで欲しいと思ったことも過去にありました。

どんな人が、クライアントに喜ばれるのでしょうか?

もちろん、さまざまなスキルがあることはとても素晴らしいことですが、ここは、割と時間を掛ければどうにでもなるところかなと思っております。

私はスキル以前に、「コンピテンシー」が重要だと思います。

コンピテンシーとは、上手い日本語がないのですが、例えば「論理性」であったり「戦略性」であったりと、その人の何かを実行する能力を表すような言葉です。

コンサルタントの仕事を例に挙げると、人の話を聞く「傾聴力」を使ってヒヤリングを行い、「論理力」をつかって整理したりまとめたりします。そして「問題解決力」を発揮することで、解決策を導き出すのですが、その解決策は「戦略的」でなければなりません。

そして、導き出された「解決策」も、「プレゼン力」がないとクライアントにいる多くのステークフォルダに響かないものとなるでしょう。

つまり、コンサルタントの仕事の大半は「コンピテンシー」によって成り立っていて、何かの分野の専門性やスキルといったことは、これらのことを実現する上で必要な要素でしかないとも言えます。

そして、ここで気づいた方も多いと思うのですが、これらは、どこの会社においても仕事を進める上で重要な能力で、こういうことができる人は、多くの場面で重宝がられたり、評価が高かったりするでしょう。

つまり、コンピテンシーが高い人材は、どんな業界にでも必要とされる「市場価値が高い人材」となりえるわけなのです。

優れたコンピテンシーを前提として、スキルが構築されている人材は、そのスキルが遺憾無く発揮される業界において、重要なポジションを得ることができるでしょう。

我々は、これまでの経験やスキルはもちろん高く買っておりますが、スキル以前に、初めに重要視するのは、「コンピテンシーに伸び代を感じる人材」かどうかなのです。