ポジションとパースペクティブの違い

毎週開催している社内の勉強会で、「あるべき姿」の描き方について話していた時です。

問題発見に必要な4Pというフレームワークについて解説していたのですが、この中の「ポジション」と「パースペクティブ」の違いがわかりづらいという話になりました。

コンサルタントが、現状認識のためにクライアント企業のインタビューを行うことは毎度のことでして、その際に、「誰に」インタビューしたかは非常に重要です。

例えば、よくある上司と部下のやりとりに、

上司:「それで、お客様はどういっているのだ?」

部下:「お客様は、当社の商品に興味をもっていただけています」

といったものがあります。

この場合、「お客様」というのが誰なのか?を気にするわけです。

なぜ、そんなことを気にするのかわかりますか?

「決裁権があるかどうかを気にする」は、少し当たってますが正解ではありません。

ポジションとは社内の立ち位置

ここでいう「お客様」が社内でどういう立場の人なのか、わかりやすい役職で言えば、部長なのか、課長なのか、といったことです。

しかし、部長か課長かといったタイトルに目を向けるのは早計です。

大事なのは、「その人がどういう責任を負わされているか」なのです。

例えば、1億円の商材を購入しようとしている時と、10万円の商材を購入しようとしている時では、同じ購買の意思決定としては、重みが変わります。

1億円の商材を購入して、100万円の効果しか得られなかったら、その人はその職位を失うかもしれません。

一方で、10万円で1万円の効果しか得られなくても、「もったいなかったけど、いい勉強になったね」となるかもしれません。

1億円の決済権を持っている人は、1億円以上の儲けを期待されているので、話題も1億円が最小となるような話題でないと興味を持ってもらえない可能性があります。一方で、10万円の決済権しかない人は、小さな話題しか自分できめることができないのです。

つまり、コンサルティングをする時にも、対象者の立ち位置(=ポジション)にあったことを考えられていなければ、的外れな質問をしたり、アドバイスをすることになるわけなのです。

通常部長であれば、部全体の予算と売り上げに対して責任を持っているはずなので、そういう意識で仕事に臨むべき、となるわけです。

では、パースペクティブというのは何でしょう。

パースペクティブとは視点、視座のこと

日本語に訳せない言葉なのですが、私は「視点」とか「視座」というふうに解釈することが多いです。

同じことについて話していても、視点が違うと見方が変わります。

例えば、パン屋さんの売り上げをあげたいと言う話をしていた時に、視点が低いと現場の話ばかりしますが、視点が高いと仕入れや売り方についても言及します。

お店で売れないのであれば、デリバリーサービスをやったらどうか、個人向けだけでなく企業のビジネスマン向けにしてはどうか、人通りが少ないので移動店舗をやってみてはどうか、といった売り方そのものを変えようとするような取り組みを着想するには、視点が高くないといけません。

私の経験上、ポジションが高いからといって、パースペクティブも高いということはいえません。

現場仕事を積み重ねることで実績ができ、そこが評価されてポジションが高くなる方もたくさんいらっしゃいます。

逆に、足元の作業がおぼつかない若手社員が、高いパースペクティブの発言をした場合、「いい考えだね」と褒められる一方で「まずは足元のことをこなしなよ」と嗜められることもあるでしょう。

あるべき姿をコンサルタントが作るときは、相手のポジションにかかわらず、高いパースペクティブを持ってあるべき姿を作り、構造的に詳細の部分(低いパースペクティブ)を明確にしていくというアプローチを取ると、さまざまなポジションとパースペクティブな方に「なるほど」と思っていただける解決策が提示できるでしょう。