皆様は、「条例」や「規則」という言葉をご存知かと思います。しかし、それが何なのかについて考えたことはございますでしょうか。
「条例」と「規則」は、どちらも自治体が制定するルールのことで、その違いは、誰が定めることができるのかとどこまでの罰を定めることができるのかです。
条例は、自治体の議会が制定するものであり、様々なルールや罰(禁錮、罰金、秩序罰)などを定めることができます。一方、規則は自治体の長が制定するものであり、様々なルールや一定の罰(秩序罰のみ)を定めることができます。
どうでしょう。意外と知らなかったのではないでしょうか。本稿では、自治体関係の法律とそれに伴う興味深い判例を紹介していきます。
今回紹介する法律は、「国家賠償法 1条」です。まずは、「国家賠償法 1条」に記載されている条文を見ていきましょう。
国家賠償法 1条 1項:国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、 その職務を行うについて、 故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
条文に書かれている言葉は難しくて理解し難いですね。簡単に説明すると、公務員が職務中に「ワザと」または「うっかりミス」で他人に加えた損害は、国または自治体が賠償する責任を負うということです。この法律の面白いところは、「国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員」については「公務員でなくても範囲内」ということです。例えば、自治体に依頼された仕事をこなしている「公務員ではない人」も場合によっては、この法律にいう「公務員」に該当するということです。
さらに面白いところは、「職務を行うについて」の部分です。実は、この文章が示す範囲は「職務中」に限られないのです。例えば、消防士が休みの日に消防士の格好をして不法行為をした場合にも「職務を行うについて」に該当するケースがあります。一言でいうと、「公務員」が客観的に見て職務中に見えるかどうかが判断の基準になるわけです。
一方、この法律の怖いところは、「公務員」が「職務中に見える様子」で行った他人に対する損害は、国または自治体が賠償しないといけないところにあります。このような事件があった場合、国や自治体は、被害者の方に賠償金を支払う義務が発生することになります。
どうでしょう。国や自治体が少しだけ可哀想に見えないでしょうか。ご安心ください。国や自治体の損失を「公務員」本人に請求できる規定も存在しております。
国家賠償法 1条 2項:前項の場合において、 公務員に故意又は重大な過失があったときは、国又は公共団体は、 その公務員に対して求償権を有する。
少し、難しい表現が含まれているため、解説させていただきます。「公務員」が「職務中に見える様子」で、「ワザと」または「普通に要求される程度の注意を著しく欠いたミス」が原因で他人に対する損害を発生させた場合、国や自治体は、賠償金の一部をその「公務員」に請求できるとする規定です。
いかがでしょうか。自治体関連の法律の興味深さに魅了されてきませんか。自治体関連の法律や判例を知ると、大きな学びが得られるとともに自治体や国のありがたみを深く感じることができます。
ちなみに、損害を受けた被害者は、加害者の「公務員」ではなく国や自治体を被告として裁判所に訴えを提起する必要があります。この点は、知っていた方が良いところかなと思いましたので、最後に書かせていただきました。
今回は、「国家賠償法 1条」の条文について書かせていただきましたが、次回は、「国家賠償法 1条」を根拠規定に判断された興味深い判例をご紹介させていただきます。